2026.02.03「菅本千尋」の現在地

差別のことが気になっている。誰かの具現化した差別行動ではなく、誰もが持つ差別意識こそが厄介な問題だと思っている。

幼い娘を持つ知人女性が、男性アイドルを告発した女性元アナウンサーに対して「自分で家に行ったんでしょう?それが悪くない?」と言った。

それを聞いて、衝撃を受けたのにヘラヘラした自分のことを許せない。

「彼女は頭が悪いから」を読んだ。少しずつ読み進めて、さっき読み終わった。

私は私を所有しているかのような男性の言動を許さないのに、許さないと意思表明できたことがない。

私は男性の先輩の言動に悩む女性の後輩に対して適切に声を掛けられたと思わない。

私は結婚や出産によってキャリアを諦めようとする同性にがっかりしないと言うことができない。

私は、「頭が悪いから」と思うことがないと言うことができない。

私は私の持つ差別意識でさえ、どう扱ったらいいのか分からない。

深く深く根を張ったこの呪いを、見つめることしかできない。

何度も、知人女性に対して返すべきだった言葉を思う。

「正常性バイアスじゃないですか?」「娘さんがもしそういう目に遭っても同じように思うんですか?」「そういうことを言うひとたちに、彼女は苦しめられているんじゃないですか?」

冷や水を掛けたらいいことなのかな。

冷や水を掛けずに変化することってあるのかな。

何度も、それぞれの幸せについて考える。

私の正義が、単に私の正義であるに過ぎないことを反芻する。

2026年こそ、呪いが祝いに変わるように、抗っていく。いる。


2月15日追記

こどもを2人持つお母さんと話していて、「子どもができるとできなくなるから若いうちにたくさんやっておいた方がいいよ」と言われた。

私は、なんのてらいもなく「10年前はそうでしたよね」と思った。言わなかったけど。

そしてその後に、私は何回も何回もこういうことを言われてきたな、と思った。

結婚する前に、子どもが生まれる前に。

言われる度にそうなのかと受け止めてきたから、大人として物心つくうちには当然の価値観になっていた。

ここ数年は、内面化されたこの価値観を変えたくて、でもなかなか変われなくてモヤモヤしてきたけど、そのときはツルリと「10年前はそうでしたよね」と思ったから、私の呪いは祝いへと変貌しようとしているのかもしれない。

変わろうとしなければ変えられないから、これからも自分のことも社会のことも疑っていきたいと思う。



菅本千尋(活動拠点:福岡/活動ジャンル:演劇など)

高校演劇より舞台照明をはじめ、学生時代に得た美学・美術史・芸術社会学・アートマネジメントの知見を活用しながら、野良の舞台照明家・アートマネージャーとして活動している。2022年、建築家の原良輔と共に、空間演出のアーティストコレクティブとして演劇空間ロッカクナットを結成。同年11月、糸島市可也山にて開催した放置竹林×演劇のアートプロジェクトにてグッドデザイン賞受賞。2024年、九州大学にて立体作品を常設設置。演劇に限らず、ダンサーや音楽家とも共同し、「観る」という体験の在り方を探求している。旅が好き。 

つくらないAIR「めぐりめぐって現在地。ここから、」