2025.02.04 菅本千尋の「現在地」
「現在地」①
1月のいつだったか、右手の親指の爪が、その下のピンクのお肉が見えてしまうほどに剥がれてしまって、1月のあいだじゅう絆創膏で抑えるなどして伸ばしていて、ようやく親指の先っちょに沿うくらいに伸びて安心していたのだけれど、なんでか指先がムズムズするので、右手の親指の先っちょと、そこにきちんと被さっている爪の間を見てみると、新しい爪が生えてきていた。
親指の爪とピンクのお肉はぴっちりと密着しているのに、その先の爪と肌色のお肉の部分に確かに小さくて新しい爪が生えている。折れた爪かと思ったけれど引っ張ると痛いし、全然取れない。
1枚だった親指の爪が2枚になった。
2枚目の爪は私ですか。
この爪が生えて、2本目の右手の親指が生えて、2つ目の右手と右腕と右の肺、おしり右半分、右足、右の親指、右の目、脳みその右側が生えてきて、それは私ですか。
相反するAとBの間でウロウロしているから、ついにBだけをやる私が生まれているのかもしれない。
相変わらず理想ばかり高くて、できないこと悔しいこと悲しいことは多い。いつだってくだらない夢物語を描いている。誰にも期待されていない。表面を取り繕われる。
それでもその表面の下にある、ピンク色のグチャグチャなお肉に作用したい。
全部諦めていても、それだけ諦めきれないのだな、と思う。
「現在地」②
2枚目の親指の爪を剥いだ。ひりつくくらい痛かった。痛みは現実だな、と思った。
スピッツを聞くと柳川の穏やかな気候を取り戻せる。
今まで悲しい曲だった歌に、朗らかな思い出が重なっていることを嬉しく思う。
うまくいった次の日はうまくいかない。
うまくいかない日も歌をうたう。風にあたる。筋肉をふるわす。
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